海外の観光税によるオーバーツーリズム対策事例集5選|効果的な観光税活用策

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観光地への観光客の急増によってオーバーツーリズムが世界各地で問題となり、多くの都市が観光税を導入している。観光税は主に、観光地のインフラ維持や地域の持続可能な発展のために活用されている。各国ではどのような用途で観光税が使われているかをまとめてみた。

観光税・宿泊税の導入都市

観光税は各国により徴収方法が異なり、直近では特にニュージーランドの観光税が2024年度10月に35NZドル(約3150円)から100NZドル(約9000円)へ大幅に引き上げとなり話題となった。

また、日本では「宿泊税」として徴収するケースも多い。宿泊税は観光税とは厳密には少々異なるが、ここでは大枠として一覧化している。

国名導入年度税額・徴収基準
日本(東京都)2002年1泊あたり¥100〜¥200(宿泊施設の宿泊料金に応じて徴収)
スペイン(バルセロナ)2012年€0.75〜2.25(宿泊施設のランクにより変動)
フランス(パリ)2015年€0.25〜5(宿泊施設のランクに応じて徴収)
ニュージーランド(全域)2019*2024年度改定$100 NZD(国際訪問者税)を全ての外国人観光客に徴収。
イタリア(ベネチア)2019年€3〜10(訪問者数やシーズンによって変動。日帰り税)
オランダ(アムステルダム)2019年宿泊税7%+€3(1泊あたり)
タイ(プーケット島)2022年1人あたり300バーツ(約¥1,000)
インドネシア(バリ島)2023年1人当たり150,000ルピア(約1,450円)

1. イタリア・ベネチア

観光税導入の背景 – 2019年に「日帰り税」導入

ベネチアでは、年間観光客数が数百万人を超える状態が続き、特に日帰り観光客の増加が都市のインフラに大きな負担を与えていた。2019年に観光税「日帰り税」を導入し、観光客の流入をコントロールする政策を打ち出した。この税金は、日帰り観光客に限定して徴収され、宿泊者とは異なる負担を求める形式となっている。

具体的な税金の使用用途

ベネチア市はこの税収をインフラの整備や清掃活動に活用しており、観光客によるゴミの増加や公共設備の損傷などに対応するための資金源として役立てている。また、税収の一部は、観光客の行動を管理する新たな監視システムの導入にも充てられている。


2. タイ・プーケット島

観光税の背景 – 2022年に環境保全税導入

タイのプーケット島は、その美しい自然とビーチリゾートで有名だが、過剰な観光客による環境破壊が深刻な問題となっていた。特に、無計画な観光開発による自然資源の喪失が指摘されていたため、2022年に観光税(環境保全税)を導入。この税金は、観光客から徴収され、環境保全活動や地域インフラの改善に使用されている。

環境保護に向けた具体的な取り組み

観光税の収益は、プーケット島内の海洋保護区の維持、ビーチの清掃活動、そして観光インフラの修復に充てられている。また、地域の観光業者に対して持続可能な観光を推進するための教育プログラムも展開されている。


3. アムステルダム

オーバーツーリズム対策 – 2019年に宿泊税強化

アムステルダムは、観光客が急増する都市の一つで、特に市中心部の混雑が大きな課題となっていた。これに対応するため、2019年に宿泊税を強化し、さらに観光客1人当たりに対して固定額の観光税を導入した。この制度は、特に安価な宿泊施設を利用する観光客や日帰り観光客にも課税することを目的としている。

観光税の使用目的とその影響

この新たな税制度により、市内のインフラ維持や公共交通機関の拡充が進んだ。加えて、観光客の市内集中を防ぐため、観光スポットを市外へ分散させるプロジェクトにも資金が投入されている。


4. ニュージーランド

観光保全税導入の背景 – 2019年にIVL(観光保全税)を導入

ニュージーランドは、美しい自然景観を守るため、2019年に国際観光客に対してIVL(観光保全税)を導入した。この税金は、海外から訪れるすべての観光客に課せられ、収益は環境保護や観光インフラの整備に充てられている。

環境保護と観光業のバランス

観光税は、国立公園の保護や自然資源の保全活動に大きく貢献している。また、観光業自体の持続可能性を高めるため、観光業者と地域住民が協力するプロジェクトにも資金が充当されている。特に、自然観光に与える影響懸念から、35NZドルでは十分な対策資金を確保できないとの見方から、2024年に100NZドルへの値上げが決定された。一方で観光における競争力を損なうと懸念する声も出ている。


5. クロアチア・ドゥブロヴニク

観光税による観光客分散策 – 2020年にクルーズ船客への課税導入

クロアチアのドゥブロヴニクでは、特にクルーズ船による観光客の急増が問題視されていた。クルーズ船による短期間の大量訪問者が、都市のインフラや環境に負担をかけていたため、2020年にクルーズ船で訪れる観光客に対して観光税を課す政策が導入された。

観光税収の活用と今後の展開

クルーズ船観光客からの税収は、都市のインフラ整備や環境保護に使われ、観光客の流入管理に役立てられている。今後、さらなる観光客の分散策や都市環境の保全に向けた施策が進められる予定である。


まとめ

各国で導入された観光税の事例から、観光客の急増に対処するための様々なアプローチが見られる。特にベネチア、アムステルダム、ドゥブロヴニクのような歴史的都市や観光地は、税制を通じて観光客の管理や都市の保全を図ることで、持続可能な観光を意識した取り組みを行っている。

また、プーケット島やニュージーランドのように自然保護を重視する観光地では、観光税が環境保護において重要な役割を果たしている。

日本国内でも、訪日観光客の増加によるオーバーツーリズム対策として、観光税の導入が今後の課題となるだろう。これらの海外事例を参考にしながら、地域の特性やニーズに合わせた観光税の導入と運用が求められる。

参考文献・参照サイト

コメント

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